平成15年度 所蔵資料展 展示資料一覧 <双六>
S1 東海道五十三駅道中記細見双六(とうかいどうごじゅうさんつぎどうちゅうきさいけんすごろく) 一立斎広重画 弘化4年(1847)・嘉永元年(1848)頃 山本平吉版 44×63cm
広重は東海道を描いたシリーズを数多く発表しているが、特にどれを下敷きにしているというものではないようだ。この絵双六の題は、旅行案内の如く細かな情報の盛り込まれた双六という意味であろうか。
S2 手習出精双六(てならいしゅっせいすごろく) 広重画 弘化4年(1847) 49×37cm
「弟子入りいろは」を振り出しとし、「庭訓往来」「消息往来」「隅田川往来」「商売往来」等の手習いの各手本や「破門」「褒美」「席書」などの寺子屋の諸相を廻る飛び双六。各コマには関係のある句が付いている。上りは学問の神様天満宮。
S3 大功記出世双六(たいこうきしゅっせすごろく) 錦朝楼芳虎(歌川芳虎)画 慶応2年(1866) 藤岡屋慶治郎版 49×73cm
「三州矢矧橋」で猿之助が勇気を現わした場面を振り出しとし、天下を取った場面を上りにした廻り双六。上りは中央の賎ヶ峰七本槍の場面の下に折りたたまれ、横に大きく開く仕掛けとなっている。各コマの題名の下に簡単にエピソードを示す副題がついている。
S4 浅草寺双六(せんそうじすごろく) 玉英斎画 32×45cm
浅草周辺の人口に膾炙した場所などをコマとした双六。上りは浅草寺の遠景、振り出しは浅草諏訪町にあった白粉紅問屋、紅屋勘蔵の店の正月の店頭風景が描かれている。この双六はこの紅屋が配った新春の景物である。
S5 新版御府内流行名物案内双六(しんぱんごふないりゅうこうめいぶつあんないすごろく) 一英斎芳艶(歌川芳艶)画 海老屋林之助版 嘉永頃 69×50cm
料理屋、蕎麦屋、菓子屋など当時はやりの飲食店をとびめぐって上る双六。振り出しにあたる日本橋の朝市は「売出し」となっている。
双六本体の絵は芳艶が描いているが、袋の絵は師である国芳が描いている。
S6 大日本六十余州一覧双六(だいにっぽんろくじゅうよしゅういちらんすごろく) 山々亭有人案 一鶯斎国周(豊原国周)画 慶応3年(1867) 60×71cm
日本地図上に扇面で表した69の国に、国名とその国に関連の深い芝居や小説の人物あるいはそれにかかわりのある物を描いた飛び双六。「豊後」は「秋作」で秋作を演じる3代目市川市蔵の、「筑前」は「しらぬい」でしらぬいを演じる4代目坂東三津五郎の似顔で描かれている。
S7 忠臣蔵出世双六(ちゅうしんぐらしゅっせすごろく) 香蝶楼国貞(歌川国貞)画 天保後期作か 52×74cm
「忠臣蔵」は日本人にとって一つの文化と言えるほど浸透しているが、絵双六でも忠臣蔵関係の作品は多く残されている。本双六は、芝居の「仮名手本忠臣蔵」中の各場面で構成され、その俗称やキーワードを 各コマの名称としている。
S8 三十六歌仙双六(さんじゅうろっかせんすごろく) 一猛斎芳虎(歌川芳虎)画 和泉屋市兵衛版 安政4年(1857) 72×74cm
古典和歌教養の一つとして近世社会に浸透していた三十六歌仙の双六である。六歌仙をふりはじめに三十六歌仙を廻り、歌道を守護する和歌三神を上りとする。三神は流派により多少異なるが、この絵では、その姿や背景から柿本人麻呂、衣通姫、山部赤人と思われる。
S9 新版御菓子双六(しんぱんおかしすごろく) 高橋堂雪斎版 38×51cm
金平糖などの庶民的な菓子を振り出しとして、御献上の菓子を上りとした飛び双六。菓子名は今日残っているもの、いないもの併せて24種の菓子をコマとしている。高橋堂は菓子屋で、宣伝を兼ねた配り物ではなかったかと想像される。
S10 女子家庭双六(じょしかていすごろく) 牧金之助版 明治31年(1898) 74×73cm
衣服をあらためる場面を振り出しとし、婚礼を上りとする飛び双六。嫁入り前の上流階級の女子が身につける教養や作法が各コマになっており、その結果最終目標が白無垢衣装を身にまとっての婚礼になっている、一種の出世双六とも言える。