東京学芸大学附属図書館の望月文庫や日本近代教育史資料等の特別コレクションには、江戸時代から明治時代にかけて出版された「往来物」と称する庶民向けの教育・実用書や、絵双六などの資料が多数所蔵されています。平成24年度は、「近世における学びと遊び-往来物と絵双六を中心に-」として、「古典文学作品の受容」「子どもの学びと遊び」「作者と絵師」という視点から、特別コレクション資料の展示を3回にわたって行いました。
第1回目は「往来物と絵双六から見る古典文学の受容」というテーマで、和本7点、絵双六1点を展示しました。
『源氏物語』『伊勢物語』『竹取物語』「百人一首」などの日本を代表する古典文学は、現代の私たちにも絵本や教科書をとおして、またカルタ遊びなどで親しまれています。それらの作品は、江戸時代の人々にとってもやはり古い時代のもの、「古典」であり、またしかるべき身分階層の人々、特に女性が学ぶべき知識教養の一つでもありました。
江戸時代には、出版というメディアにより古典文学が幅広い階層の人々に読み親しまれるようになります。それに伴い、絵を入れたり言葉の意味を説明したりして古典を分かりやすく読ませる工夫が施されます。また頁(丁)を上下二段にして、文学に関することだけでなく日常生活に役立つ実用的な知識をも豊富に取り入れ、読者に提供しています。皆様にも江戸時代の人々と同じように、古典文学の世界を楽しみながら学んでいただけると幸いです。
(監修:湯浅佳子 [本学日本語・日本文学研究講座准教授])