東京学芸大学附属図書館の望月文庫や日本近代教育史資料等の特別コレクションには、江戸時代から明治時代にかけて出版された「往来物」と称する庶民向けの教育・実用書や、絵双六などの資料が多数所蔵されています。平成24年度は、「近世における学びと遊び-往来物と絵双六を中心に-」として、「古典文学作品の受容」「子どもの学びと遊び」「作者と絵師」という視点から、特別コレクション資料の展示を3回にわたって行いました。
第3回目は「作者と絵師」というテーマで、往来物・絵双六を支えた作者や絵師に焦点を当ててみました。
作者としては、『東海道中膝栗毛』で有名な十返舎一九(1765~1831)、『浮世風呂』の式亭三馬(1776~1822)、『南総里見八犬伝』の曲亭馬琴(1767~1848)を取り上げ、それらの戯作者たちが関わった往来物を展示しました。
また、絵師としては、浮世絵師として著名な葛飾北斎(1760~1849)、渓斎英泉(1791~1848)、歌川広重(1797~1858)、歌川国芳(1797~1861)を選び、彼らの絵双六、絵本を見ていただくことにしました。たとえば、今回展示した広重の「東海道五十三駅道中記細見双六」と「東海道五拾三次之内」シリーズ、北斎の『絵本庭訓徃来』と『北斎漫画』など、それぞれの絵師たちの他の画業と比べてみるのもおもしろいでしょう。
今回の展示はささやかなものですが、文学史や美術史に登場する作家や絵師たちも往来物や絵双六と関わりを持っていたことに思いを致し、往来物や絵双六への関心をさらに深めていただければ幸いです。
(監修:嶋中道則 [本学日本語・日本文学研究講座教授])