往来物は、読み・書き、実用的な知識を身につけるために、江戸時代を中心に広く人々に用いられた書物でした。内容は非常に多様で、いろは文字や各種用語をはじめ、武士の書簡や家訓、中国の古典なども収録されました。往来物の刊行が進むにつれ、理解するには難しい内容や学ぶべき様々な事項について、より学びやすく、わかり やすく、様々な工夫が施されました。このことは現代の教科書や参考書などにも通じるものといえます。
中でも高井蘭山(1762-1839)は、江戸時代後期の武家出身の戯作者の一人で、漢籍や字書、往来物などについて子供にも分かりやすく、役立つ内容とすることに力を尽くしました。本展示では、当館所蔵資料から蘭山の著作の一部をご紹介し、200年以上前に行われた学びの工夫の一端に触れていただきました。
(監修:黒石陽子 [本学日本語・日本文学研究講座教授])